2011年6月1日水曜日

「ガラスの波紋」― 日本ガラス工芸協会展 ― 小田急百貨店創業50周年






つづいて小田急百貨店で開かれた2011年日本ガラス工芸協会の展示会「ガラスの波紋」に行ってきました。昨年に和光で開催された同協会の展示会にも行きましたので、写真が残っていたこともあり、ある程度昨年の様子を思い出しました。そこで今回は昨年との比較を含めて少々印象をまとめてみたいと思います。



写真の印象でも分かるように思いますが、今年は前回に比べて全体に小振りでした。平均してかなり小さくなっているように思われます。しかし充実感は変わらず、というより、むしろ今回の方が充実感が高い印象でした。また端正で落ち着いた作品が多かったように思います。技術とデザインにはちょうど適した大きさを見出してきたような気もします。

(カットグラス)
昨年には巨大なカットグラス作品があって少々驚きました。それも深い彫りで、何か水晶の巨大結晶のような印象でした。大変な技術だと思いましたが、ガラスの器としてはちょっと違和感を感じたのを記憶しています。今回、入口付近で、普通のタンブラー程度の大きさのカットグラスがあり、かなり強い印象を受けました。カットグラスとして違和感のない、落ち着いた端正なデザインでしたが、カットグラスのデザインとしては従来あまり見た事のないようなパターンで、多少日本的な感じもありました。日本的な感じがしたのは丸底で台のない器の形によるのかも知れません。作者は記憶していませんが、経歴によると外国留学も経験された方のようです。

(外国留学)
経歴の紹介をみると、出品作家の多くが外国留学を体験されていることが分かります。やはりガラス工芸には外国留学から得られるものが大きいのかな、という印象を持ちました。ある意味当然かも知れませんが、やはりガラス工芸の本場が西欧であることは変わらないような気がします。個人的に、かつてヨーロッパ文明あるいは文化とガラス工芸が発達したことの関連などについて大いに興味を持っていたものです。故佐藤潤四郎先生の発言や著書でも、ガラス工芸が西欧文明を理解することに繋がるというようなことがよく言われていたと記憶しています。科学、哲学、それに錬金術などの神秘思想などとの関連も興味を今もまだ興味がありますが、最近はあまりガラス工芸や美術との関連で考える事は少なくなりました。自分がもうガラス工芸をする可能性がなくなったせいかもしれませんが。それにしても今はもう、ガラス工芸であまりそういうことにこだわる時代ではないのかも知れません。逆に、いったん海外での経験を経たあとで日本で陶器あるいは磁器の影響を受けているように見える作者もあるような気が。というのは広沢さんの作品にそういう傾向が見られたように思います。他にも留学経験を問わず、陶磁器の影響を受けているように見える作家の方が多いと思いますが、その影響の受け方も結構多面的で、そこにも海外での経験が反映することもあるような感じもします。

(技法の充実)
繰り返しになりますが、全体的にどの作家も比較的小振りでオーソドックスな形の作品の中に各種の技法を密度高く投入し、完璧に仕上げた充実感のある作品群で迫っているように思われました。